週一の学術論文ニュースレター、今回は「社会情緒資産とリスク志向の関係」という論文です。
こちらの論文では、これまでリスク回避志向が高いと考えられたファミリービジネスは、一概にリスク回避志向が高いとはいえず、社会情緒資産を失うことを回避する傾向が強い一方で、財務資産へのリスク志向はむしろ高いことが示されています。
ヒトには何かを「1」得ることよりも何かを「1」失うことを重く見る傾向があるようです。そしてこの「1」として数えるものが何かによって行動が変わります。ファミリービジネスにとっての「1」は社会情緒資産であり、そのためには財務リスクをとることを厭わない。そして、ここまでいうと明らかに言い過ぎなのですが、財務資産を「1」とする企業では、たとえば信義を貫くとかいうレベルではなく場合によっては法律を守るというレベルでの社会情緒資産リスクをとる可能性すらも考えられます。
わたしは社会情緒資産という言葉を見たときに第一印象として草食的なイメージを頭に浮かべましたが、失わないように守るべき社会情緒資産が明確な場合には、むしろ燃える闘魂的なイメージにもなりうる
ということでしょう。たとえば、稲盛さんみたいな。
日本企業・日本社会はかつての闘魂を失って久しいと指摘されがちですが、本当に失ってしまったのは守るべき社会情緒資産なのかもしれません。しかし、それは「見失った」だけで、見る角度によってはまだそこにあり、それがこれからの日本企業・日本社会の闘魂の火種になったら素晴らしいなぁと思うのでありました。