「安倍晋三は大胆な構造改革と将来を見据えた外交を成し遂げた。”アベノミクス”は停滞していた日本経済に弾みをつけ、多様な人材、とくに女性の活躍を促進した。力強い外交政策では日本国民に自信をもたらし、TPPや四か国戦略対話など経済面に留まらず軍事面でも強い信念を発揮した。平和憲法改正の姿勢は国内ならびに東アジアで多くの議論を巻き起こした。これらの政策はまだ実現には至っていないものの岸田政権にも引き継がれている」
結論としては政治音痴の私には、今回の安倍さんの死の意味がまったく分かりませんでした。ロシアからのガス供給が止まる恐れがある日本、露中へ明らかな敵対姿勢を示す米国、米の挑発を正面から受けるかのようにウクライナ侵攻を進めたロシア、ウクライナを強力に支援していたジョンソン首相が辞任表明した英国、国際的にはだんまりを決め込む中国。これらは今回の安倍さんの死には直接的に関係ないにしてもどのような状況の中で安倍さんが殺されてしまったのか私には引き続きまったくわかりませんでした。
そこでわたしにできることとして、政治家として政策面から安倍さんを理解するのではなくリーダーとして行動面から安倍さんの理解に努めてみました。通常の方法とはまったく異なりますが、首相官邸ならびに各省サイトに残る安倍さんの演説をもとに安倍さんのコンピテンシーをなんちゃってアセスメントしてみました。
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<安倍さんのコンピテンシートップ3>
1.ビジョンと目的の推進
説得力のあるビジョンやパーパスを示すことで周囲を動機づけ行動を起こさせる。日本人には馴染みのある三本の矢の例を用いるなど内容面だけでなくコミュニケーション面も熟慮された「日本再興戦略」を描き、国内では自国に対する自信を、海外からは日本に対する信頼を高めるよう努めた。特に海外に対しては「美しい国、日本」を掲げてインバウンドの飛躍的増加を目指した。
2.あいまいな状況への対応
物事が不確実な状況や前途が不明確な状況においても的確に周囲をリードする。震災後の2012年という混迷を極めた時期から国内復興に尽力した。対外的には中国の習近平、インドのモディ、ドイツのメルケル、ロシアのプーチン、そしてアメリカのトランプなど各国の歴代トップの中でもおそらく際立った存在の世界各国のリーダー達と丁々発止で渡り合い、劇的な地政学的シフトの中で国政を主導した。
3. 人材の育成
国家と個人の目標の両方を達成するために人材を育成する。教育再生実行会議を設置し、教育の再生について広く議論するに留まらず実行に移す体制を確立した。教育基本法改正、教育無償化、教育のグローバル化対応など、時代の要請に応じた教育の実現を志向した。女性活躍推進法を成立させ、社会の活性化に向けて女性活躍を牽引した。
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安倍さんの死をきっかけにはじめて過去の演説を落ち着いて読んでみましたが、長期的な展望を持ちつつ変化の可能性を機動的に探り、バックキャスティングで国をまとめ上げる変革型のリーダーという印象を持ちました。自身の健康を害するほど国に尽くされただけあり、柔和な表情の外見に反して「身はたとえ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留めおかまし 大和魂」的な強い覚悟の持ち主だったのでしょう。今回このようなポストを政治に疎い私が書いたのも安倍さんの強い覚悟に影響されてのことと思います。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。