世界の同族企業研究の潮流

週一の学術論文ニュースレター、今回は「世界の同族企業研究の潮流」という、いまをときめく早稲田大学・入山先生による2014年の論文です。こちらの論文では、世界のファミリービジネス研究を受けて日本の特徴を整理した上で、今後の研究の方向性について整理しています。
 
本論文を読んで大変興味深いと感じたところは、ファミリービジネスは財務的な結果だけでなく、非財務的な結果、特に「社会情緒資産」と呼ばれるファミリーと企業をとりまく様々な関係に価値を置く傾向がみられ、そこがファミリービジネスの強みの源泉のひとつと考えられている点です。
 
日本企業は、ある意味では非同族企業においても、社会情緒資産を重視する傾向が見られるのではないでしょうか。経営人材育成において「最近注力した取り組み」をお伺いすると、”諸先輩から引き継いだ資産を次世代に渡す”のようなストーリーは、ファミリービジネスでなくても比較的よくでてきます。最近では、メンバーシップ型人事などがその顕著な例ですが、そこが日本企業の「ダメなところ」扱いになっており、わたしも知らず知らずにそうした方向に加担している感すらありますが、実はそこが日本企業の強みの源泉のひとつでダメな原因は別のところにありました、みたいな話だったら本当に恐ろしい話です。
 
今回のグーグルさんでの12,000人解雇も「心理的安全性」の話はどこにいったんだという感じで社会情緒資産的な論点から疑問が投げかけられているのを見ても、年功序列や終身雇用の否定は必ずしも社会情緒資産の否定ではないですし、むしろそうならないように社会情緒資産を重視することの功罪を理解した上で、ジョブ型人事なども含め、日本企業に求められる人材育成のあり方について考えを深めたいと改めて感じさせられる論文でした。

https://jinzaiikusei.substack.com/p/6ae

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